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真夏の世の夢

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子どもの頃に追いかけた現実のヒーローたちの殆どは色褪せてしまった。
 
ゴジラが壊した東京は、ミニチュアだった事を知ってしまったし、アニメやドラマのヒーローはテレビの中にしか存在しない事を知ってしまった。
スポーツ選手も、みんな引退して、指導者になったり、つまらないタレントになってしまったり。
 
そうこうしているうちに、自分も子どもを授かり、いつまでも何かに憧れて追いかけていくだけではいけない、大人としての役割が増えてきた。もう少しだけ、子どもでいたかったなぁ。とか、もう少し憧れを追いかけていたかったなぁ。とか思ったところで、親の老いた背中が小さく見えたり、確実に世代交代されていく。
 
だから、工藤が西武に帰ってきてくれた事は嬉しかったし、マウンドに向かう姿に涙してしまったのだ。
ただ出てきただけでなく、きっちり仕事をしてバッターを片付けるその姿は、本当に格好良く、僕を小学生の頃に引き戻してくれた。色褪せたヒーローばかりの世界で、まだ輝いているヒーローがそこに居た。
 
どうか、もう少しだけ、夢を見続けさせて下さい。